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※個人の趣味によるブログです。基本的に本を読んでます。
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No.537
2013/08/15 (Thu) 15:59:45

あと1冊読めば目標の年内150冊達成になります。
ちょっと自分でも読みすぎか、と思い引きました(苦笑)。いや、読書家の方に比べればまだまだ米粒くらいのレベルでしょうけれど。
さてさて、次は何読もうかなあ、といくつか頭の中に候補を挙げている状態です。

で、ちょっとだけ去年のマイベスト「影武者徳川家康」を読み返しているのですが、やっぱり震えるほど面白いです…!!

家康が関ヶ原で死んでしまって、混乱を防ぐために影武者の二郎三郎が家康になった、というのが大前提の設定です。大ほら吹きやらなんやら馬鹿にすることなかれ。歴史書やらを紐解くと、「もしかして…」と思わざるを得ない根拠が提示されています。この歴史的事実と作者の見解と物語が見事に融合し、熱くそして心躍る物語に仕上がっています。
また征夷大将軍を嫡子に譲ることで将軍家という基礎が出来上がるため、二郎三郎が征夷大将軍になりさらにそれを息子である秀忠にあけ渡さなければならない。つまり二郎三郎が征夷大将軍を就任を拒否したり、その位を秀忠に譲らない限り徳川家の基盤は盤石のものにならないという弱みがあります。征夷大将軍の位を渡した後でも、大御所政治と称し家康(二郎三郎)は居座ります(院政みたいなもの)。で、征夷大将軍の名称は引き継いでもその他の権利ははまだ家康が持っているのです。本当の家康ではない影武者風情に脅威を感じる秀忠の陰謀と、それを上回る二郎三郎の返しの一手がもうもうもうってくらい面白いです…!!

特に偶然目に留まって心を打ったのが、文庫版「中」の207-227。
(…)二郎三郎は何事もなかったかのような顔で熱海郷から江戸に帰った。
(…)秀忠のもとへは阿茶ノ局をやって、帰城のことをしらせただけである。仕方なく秀忠の方から挨拶と報告に自らやって来た。
「この度は奉行どもがあやまちを犯し申しわけござりませぬ」
いまいましさを隠しながら秀忠は云った。
「熱海の湯はよかったよ。将軍の身では気ままに入湯に出かけることもならず、気の毒だな」
二郎三郎は悠々と答えた。事実、秀忠の方は蒼黒くやつれ果て、二郎三郎は血色もよく丸々と肥えていた。
秀忠はしめ殺してやりたい思いにかれらた。このずるがしこいおぼれ一人のために、征夷大将軍ともあろう者がきりきり舞いさせられ。好き勝手なことさえできずにいるのだ。(226-7)
すごくないですか(笑)! もうこのシーンは笑ってしまって笑ってしまって…! 秀忠の怒りと、家康(二郎三郎)のタヌキおやじっぷりがもう最高!
この老獪さが癖になる…!!

こうなった端的な脈絡は以下にて。
 鷹狩に出かけた二郎三郎(家康の影武者)だが、幕府によって鷹狩の地とされた場所は、狩猟禁止になっているのにもかかわらず、罠が仕掛けられていた。怒った二郎三郎は聞き込みをする。人間による狩りが禁止された鷹狩場で、動物たちが繁殖し、近隣の田畑に被害を与えているため、百姓らは関東総奉行の内藤清成と青山忠成の許可を得て罠を設置したという合理的な措置だったのだが…。二郎三郎は自分の権威が脅かされたことに激怒し、戦闘準備を始める。
 いつもの脅しだと思って腹を立てながら悠然と構えていた秀忠(のお馬鹿ちゃん)だったが、家康(二郎三郎)の側近、本田正信に仲裁を頼もうと考えた。江戸城改築の折、骨抜き状態の城を攻め入るなど容易なこと。また、もし戦人たちが嗅ぎ付ければ、「海道一の弓取り」の家康と、戦を六に知らず関ヶ原の戦いでも失敗を犯した秀忠、どちらにつくかなど一目瞭然。もしくは二人の首を取り、新たに天下人になるか…。
 青ざめた秀忠は正信は改めて調停を頼むのだが、「出来ない」と一蹴される。居場所が解らないという。疑う秀忠に「疑うなら腹を切る」「徳川の御家が崩壊するさまを見ずに死ねれば、望外の倖せにござる」とお前にはこの事態を収拾できまいという強烈な皮肉を呟きながら、切腹の準備を始めた。正信が死ねばそれこそ内乱一直線だ。腹を切らんとする一歩手前で慌てて静止の声を上げた秀忠に、いくつか策を授けたのだった。(207-221)
という背景がまずあります。
その後、二郎三郎の使者によって顔を合わせた二人は
「おやりになりましたね」
「ああ、やってやった。がーんとな」
(…)二人は揃って、愉快そうに高笑いした。(222-224)
というのを経て、あの展開です。すごくないですか(笑)!

というわけで、これから準備して出かけてきます。
夜には戻ってくるのでその時また何かあれば。

あ、もともとはこの人の書き方をちょっと取り入れたいなあと思って読んだのですが。面白くて面白くて…! やっぱり好きです。

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No.536
2013/08/14 (Wed) 23:44:36

本日の一冊は池井戸さん「俺たち花のバブル組」。
ドラマでいうところの半沢直樹シリーズ2作目です。小説でいうところの「俺バブ」シリーズ2作目です。これで既刊の同シリーズは読破しました。読んだ順番は3作目→1作目→2作目ですが(苦笑)。
3作目「ロスジェネ(略)」はともかく、余計なお世話かと思いますがタイトルで損してると思うのですが…。
きれいごとではない、ちょっと悪いところが新しい「ヒーロー像」で刺激的です。
イヤな上司とかに「こういいたいけど言えない!」「コノヤロー、今に見てろよ!」「あんたの指示じゃん!」などという言葉にできないサラリーマンの葛藤を、気持よくというか粉砕するほどに身代わりになって体現してくれます。すっきり!!

もし原作の2作目通りにドラマが終わったら、3作目の映画化もあるかもしれませんねー。
ドラマは観てません。

池井戸さんはここ2ヶ月くらいで12冊読んでいるのですが、その登場人物が出てきただけで「あ、こいつが黒幕だ」と大体解るようになってきました(苦笑)。どう料理するかを楽しむちょっと悪趣味な読書にもなりつつ、ストレス解消にもなります。

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No.535
2013/08/14 (Wed) 00:07:20

枝豆を買おうと思って、新宿高○屋に寄ったのですが(※夕方の割引時間は結構お得)、やたら高い枝豆しかなくて諦めて、傘やらサングラスやらロ○ベのバッグを店舗外から覗いてきました。
現在の展示スペースが、銅を使ったアートなのですが、ジ○リみたいでなかなか素敵でした。
http://www.cty-net.ne.jp/~daybyday/

↑この人たちです。
時間があればもう一度行きます。

ええと、今から洗い物をして髪の毛を乾かして、本を数十ページ読んで、時間があったら小話を書きたいと思っております。
明日はかっこいいお兄さんの美容院へ行きたい…。

そうそう。昨日の雷雨。みごとに乗っていた電車が雷の中を突き進んでいて、停電して止まりました(笑)。近くに雷が落ちるのって恐怖ですね! 今更ですスミマセン! 電車乗りながら向こうの鉄橋に雷が落ちたのを目撃しました。恐ろしや恐ろしや。昔の人が雷を怖がっていたわけが解ります。
電車が止まったのもあって、最寄駅に着いた時にはかなり雨脚が弱まっていたのでそれはそれでありでした。

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No.534
2013/08/11 (Sun) 23:44:06

カッコいいお兄さんがいるお店にヘアーカットに行こうと思ったのですが、お布団を干している時に熱風を浴びた瞬間すごすごと引き下がりました…。我ながらへたれています。カッコいいお兄さんに加え、美人でカッコいいお姉さんもいるお店で、ルンルンするのですが暑さの前には…。たどり着けない。
お布団は早めに取り込んだのですが、からっとしたというかもうなにこれってくらい熱くなりました。その熱さ、焼石の如く。布団がちょっとした凶器へと変貌を遂げました。
夏のこの熱量を別のエネルギーに変換したら、地球は救われる。気がする…。でもやっぱりまだ扇風機です(笑)。いや、エアコンなしでも快適な室内とはスバラシイ!
お昼過ぎに雷と夕立。雷は平気なのですが、今日のは少し怖かったです。音がすごかったの。
あああーやはりヘアーカットに行きたいですー。

モーニン○サンダーに最近はまりそうです(笑)。夏のチョコレートのあの甘さが強くなる感じが好きです。

小話を書いていたのですが、集中力とかいろいろ切れてしまいました…。

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No.533
2013/08/11 (Sun) 03:34:09

出かける予定だったのが、ベランダにふと出た瞬間「無理だ…」と悟りました。
今日、暑くないですか?
それでも部屋の中はどういう訳か、(わたしには)暑くないので扇風機で事足りています。
と、言うと「えええー!」と驚かれます。エコではなくて扇風機でちょうどいいです。

さて、最近読んで面白かった本。
「チョコレートゲーム」:岡嶋二人
「チョコレート」って隠語で「裏金」の意味なので、マネーゲームの話なのかなあと予想していました。そういう話が好きなので、期待しながら本を手に取ったのですが、なんとまあ不和の親子(フォーカスは父と非行息子)なので、ちょっと肩透かしを喰らった気分がしました。しかし読んでいくと、息子の同級生の死、そして高校では何が起こってるのか――。そんな盤上に立たされている息子の役割がまた…。そして父親の取った行動により隠された真相が明らかになっていく――。
岡嶋二人らしいお話で、面白かったあ…! 残酷でやるせない部分もあるのですが、あの展開で清々しく閉めてくれるのは、嬉しいなあ。展開が巧い!!
「99%の誘拐」「クラインの壺」に続くマイフェーバリットに認定です。

「虚構推理――鋼人七瀬」:城平京
こちらは去年のミステリ大賞だか何だかをもらったヤツです。
なんていうか和風怪異が混じっていて好みでした…(笑)!!
岩永琴子と桜川九郎のキャラクターがライトノベルじみてはいるのですが、とてもマッチしていて素敵です。笑ってしまう(笑)。さらに岩永の取った方法はもうこの情報社会において、「うわあああ。この展開はあるよね!」と思わずうなずいてしまうもので、それもインパクトが強かったです。
鋼人七瀬という都市伝説に、一足一眼の妖怪変化に「知恵の神」「姫」と呼ばれる岩永琴子(※人間)と、化け物も裸足で逃げ出す桜川九郎が立ち向かう。作られた「怪異」には「嘘」で――。虚構推理が展開される。
あっさり過ぎるあらすじにて御免。
本格ミステリに対する挑戦というかアンチテーゼというか…。あまりここら辺のことが解っていないただの本好きなので、深く突っ込めませんが、面白かったあ! 「ミステリ」でありながらありもしない「ミステリ」を作り上げていく。「都市伝説」を絡ませてくるところが興味深く「都市伝説」や「妖怪」の「誕生」の説明は、この情報社会を反映しているのではないでしょうか。
どうやらシリーズ化の予定もあるみたいなので、首をながああああああくして待ってみます。

明日はあの伝説の(まだ読んだことないけど)「テロリストのパラソル」かな。

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No.532
2013/08/07 (Wed) 23:36:50

追記というか訂正
新たな知識は脱衣麻雀ではなくて、脱衣パチンコです。
間違えたあああ。疲れてるうううう。
==========


本日、脱衣麻雀なるものを知りました(笑)。
先輩社員(男)にその存在を教えてもらいました。ええと、プレイヤーが(罰ゲームとして)脱ぐのではなくて、高得点の人が脱衣しているお姉ちゃんの絵を見れるそうです。え、それって魅力があるの(笑)? 世の中にはまだ私の知らない世界が広がっています。広いなあ…。というかバブル臭がすごいするのは気のせい?
いや、プレイヤーが脱ぐのなら、悪人っぽい笑顔を浮かべる絳攸に負けた楸瑛が「…く」と顔をゆがませながら、妙に色っぽく服を脱ぐシーンが…。いえ、何でもないです。なんかもうコメディ路線です。だから、何でもないです。

今週は体調面できつくて、精神面で打撃を受けてなんかもう疲れたあ…。
明日の本は再び池井戸さん。もよもよしている気持ちをスカッとさせてもらいましょう。

ネタがあるのですが(脱衣麻雀ネタではないです)、自分の中で転がしているだけで書くタイミングを逸しています。週末は多分時間があるので、どうにかこうにかしたいものです。そして思う存分夜更かしして、たっぷり睡眠をとりたいです(笑)。

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No.531
2013/08/04 (Sun) 21:43:54

土曜日、千葉の友人宅へ向かう途中で、市川の花火大会に出会ってしまいました。慌てて降車して花火観賞(笑)。市川のひとつ前(東京より)の駅(小岩井?)で小一時間観て、名残惜しさを感じながらも再び電車に乗ったなら、なんと市川では眼前に花火が舞い上がってまして、再び降りました(笑)。しかしその後数発で花火は終了。
市川の駅は警備員動員の大騒ぎでした。目の前で見る花火は格別でした。夏!

で、本日はアウトレットに寄ってきて。
ようやくベルトを購入しました。ベルト予算をオーバーしましたが、いいものを買えた満足は何事にも代えがたく。そして長さ調節でカットしてもらったベルトの切れ端は「ブックマークなどに使用できますよ」と美人の店員さんに教えていただいたので、さっそく作りました。
 タグとタグを止める紐も革を使用していたので、再利用。
よし、明日からベルトともども使おうと意気揚々と決意しました。

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No.530
2013/08/03 (Sat) 16:24:11

見直してないので、ええと誤字脱字等があるやもしれませぬ。
*****

 絳攸は天幕中で煌煌と明かりを照らし、足を崩して脇息に寄りかかりながら行儀悪く饅頭を貪りながら、片手に書を携え目を通していた。文字が松明の落とす強い光と陰で自在に伸縮して読み辛いのも気にせず、大口を開けて饅頭を再び頬張り、もぐもぐと口を動かした。
戦中の本陣にあって、文官の絳攸の仕事は実は多い。
 戦後の論功行賞のため戦功を調べ上げるのはもとより、参謀として作戦を立て補給を管理し、情報収集に情報操作、和平工作と同時に高みの見物をしている諸武将への裏工作と朝廷への根回し。さらに内情把握もある。
 文官と言うのは武官には嫌われる。というのは先に述べた論功行賞は剣を持たぬ者によってなされるからだ。戦いもしないのに偉そうに、と思われても仕方がない。そして根回しなどの裏工作は、本来武官が卑怯だとして好まないからそういった侮蔑も負う。
 だが絳攸の他に、一手に全てを引き受けられるような実力がある者がいないのが事実だった。
 李絳攸はまだ三十路には少し遠いにも関わらず、鬼の頭脳と呼ばれ数々の戦に勝利をもたらしてきた。それは実際の戦いの場面でもそうであるし、政治の舞台でも次々に碁石を白から黒へと展示させていく見事な手腕だった。この頭の良さも嫉妬を買っているのだが、それは絳攸に言わせれば逆恨みだと一蹴したくなるものだ。
 疲れるから甘いものは欠かせない。またパクリと饅頭に噛り付き、小さな文机の上の盆に積み上げられた饅頭をまた一つ手に取った。
 それに再び歯を立てると思いきや、だらりとした姿勢のまま絳攸は饅頭を手鞠の様に閉じられた天幕の出入り用の布に向かって投げつけた。
 捲られた天幕の出入り口で、一つの手がその饅頭を受け止めた。今は猩々緋と濃紺が染め抜かれた陣羽織は着ていなかった。
「随分な挨拶だね、絳攸」
「何用だ、藍楸瑛」
 優雅に饅頭を口に運ぶ楸瑛は、「うん、甘い」と呟いた。
 楸瑛はふらりとやってきて特に用がないのに長居していく。今回も絳攸の迷惑そうな素振りを無視して横へ腰かけた。何気ない動作ながら楸瑛が周囲の気配を読んだのに絳攸は気付き、饅頭の山へ食べかけを戻そうとした手からそれを奪い取り、口の中に放り込んでむしゃむしゃ食べた。
「誰も潜んでいないぞ」
「そのようだ。これじゃあ潜みようがない」
 絳攸の天幕は、およそ高級役人が使用するものとは思えぬほど粗末なものだ。骨格もあらわで、隠れるところがない。子供ほどの体重が掛れば倒壊するようなボロは、手薄に見えて忍びだろうと近寄れない手強い空間を作っていた。
 絳攸は諦めて書を机に見開きのまま置いた。
「こんな夜中に俺の所へ来るなど、軽率な行動はよせ。よからぬ憶測を生むぞ」
「今更遅いのは君も知ってるだろ。見られたって何も変わらない。君と私の仲は驚くことに敵軍中にも知れ渡ってる」
「――お前が俺に賄賂を渡して将軍の地位を金で買っている、という馬鹿馬鹿しい奴か」
 下らんと吐き捨てた絳攸に、楸瑛は苦笑した。賄賂の類が大っ嫌いなのがこの李絳攸だというのを知らないのか。
「お前の戦いっぷりを見て尚そんな戯言を垂れ流すような実力も解らん奴らは、兵士失格だな。軍の質が落ちる。どんな稽古をしてるんだか」
「手厳しいね。戦いを挑んでこないから打つ手がないのは鬱陶しくて、偶に意地悪したくなるけど」
「真っ向から勝負を挑まない奴らなどくそ喰らえだ。蛙以下」
 楸瑛は思わず声をあげて笑った。
 普段から裏で手をまわして周囲の反感を買っているせいか、絳攸が一番正々堂々といったことに厳しい。
 勿論実力故の地位だが優秀な者はどうしたって悪意を買う。嫌がらせくらいで屈する楸瑛ではないが、卑怯な輩を気持よく罵ってくれる絳攸にすっとした。
 そこへ「夜分遅くに失礼」と大声が響き渡った。絳攸は誰何すると、楸瑛同様自陣の武将四人の名が告げられた。絳攸はどうする、と目くばせするが隠れようがない楸瑛はそのまま頷いた。
「入られよ」
 短く応じると幕が開けられ、巨体の武人が略式の挨拶をして、勧められもしないのに二人に向かい合うように座った。絳攸の顔が曇ったのに楸瑛は気付いた。
 粗末な天幕に六人も人間が詰めかければ、窮屈だ。そのうち絳攸以外の五人が武官となれば暑苦しくってたまらない。絳攸の考えを読んだ楸瑛は、吹き出しそうになるのを腹筋に力を入れてこらえた。
「こんな夜中に仰々しい。明日ではいけないのか?」
「藍将軍を受け入れているではありませぬか」
 暑苦しい髭面の歴戦の武将は、得意そうな顔を浮かべている。疾しいところがないなら居座っても構わないだろう、と脅しているつもりなのだ。溜息が出た。
「コイツの艶談には飽き飽きしているところでした。まあいいでしょう。用件を伺います」
「実は、陣羽織のことでご相談があります」
「陣羽織、ですか?」
 楸瑛が視線の端でピクリと僅かに動いたのが解った。
「ええ。あの猩々緋と濃紺の」
「劉輝様が下賜したあれですか?」
 四人は力強く頷いた。雲行きが怪しくなっていくと同時に、絳攸の機嫌も急降下していく。
「それがどうかしたのです?」
「僭越ながら申し上げます。あれは藍将軍には荷が重いかと思われます」
 眠そうな二重の男がきっぱりと言った。
 絳攸はこの時、あまりのくだらなさに舌打ちをしなかった己をほめたくなった。同時にこうなると読んでいたに違いないのに涼しい顔して座っている楸瑛が憎いが、もっと憎いのは目の前の筋肉の塊たちだ。
 猩々緋と濃紺の陣羽織は主君が陣営の中で最も強い者に下賜するのが決まりがある。受け取った者は先陣を切って敵陣に乗り込む栄誉ある役目を仕る。つまり若輩者の楸瑛が腕図一、勇猛果敢として目立つのが、年寄は気に食わないというだけの話だ。
「あれは主上が贈られるものです。そのことを私に云々言われても困ります」
「しかし劉輝様は絳攸様に相談せよ、とおっしゃられました故」
 ――絳攸、頼んだぞ。
 そう聞こえた気がして、絳攸は眩暈がした。
「あなた方の仰りたいことは承知しました」
 ズイと大きな顔が迫るのが鬱陶しいが、顔に出すのをどうにか耐え、さらりと言った。
「あなたたちも陣羽織を着ればいいでしょう」
 息を呑む音、唸り声。楸瑛の口笛でも吹きそうな顔。
「し、しかしあの陣羽織は主上より下賜されるもので」
「私が主上にとりなします。裁量を許されているのですから、心配御無用」
 この鬼の頭脳はやると言ったことはやる。
 あの陣羽織を付けるとなれば、否が応でも競って一番の武功を挙げなくてはならない。とんでもないことになったぞと困惑気味の武将たちを余所に絳攸はさっさと立って、「どちらに?」と慌てる男たちに「主上の元へ」と一言。去っていった。楸瑛も暑苦しい男たちに囲まれるのは懲り懲りなので、混乱に乗じて退散した。



 翌日、出陣には猩々緋と濃紺の陣羽織を着た六人の武将が我先にと馬を走らせる光景は、大いに自陣営の士気を挙げ、大勝利へと導き、戦の終焉に結びつけることが出来た。論功行賞の調査をしていた絳攸は、その五人の武将の中で飛びぬけて武功を挙げた腐れ縁が再び天幕の外に立ってる気配を察知し、饅頭を投げつけた。


*****
隆慶一郎「一夢庵風流記」ネタ。
本当に自分の力のなさが口惜しいです。

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No.529
2013/08/03 (Sat) 12:03:04

読了「烏に単は似合わない」。ファンタジーな世界観です。
 思わぬところに攻撃を仕掛けられて、目まぐるしくこれまでのストーリの断片が頭の中を駆け巡りました。実は○○○○なところがなかなかよろしく、そして実は○○なところが微笑ましく。ネタバレのため伏字御免。

あらすじ:
八咫烏が統治する「山内」の世継ぎである日嗣の御子、若宮の后選びのために、東西南北の名が冠せられた大貴族から、四人の姫が集められた。東家のあせびは春殿、南家の浜木綿(はまゆう)は夏殿、北家の白珠(しらたま)は冬殿、西家の真赭の薄(ますほのすすき)は秋殿に部屋を割り当てられ、恋心や一族の期待などを胸にあでやかに時には凛と振る舞う。しかし若宮が一個うん姿を現さない間に、事件が起きた――。

ファンタジー設定の只のお后選びだったら手を出さなかったでしょうが、八咫烏に化けられるというのに惹かれました。あせびのおっとり加減、白珠のきつい性格、真赭の薄の見栄っ張りにはちょっとずつ嫌気がさしたのですが(笑)、でも読んでいくうちにのんびりとした雰囲気になにか冷たいものが流れ出すような気配を感じなにかあるぞ、と内心で姿勢を正しました。
なかなか読まない雰囲気の本なので、新鮮で楽しかったです。

今日は夜から外出なのでその前に、以前仕入れたネタを消化したいです。

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No.528
2013/08/03 (Sat) 00:33:53

昨日定期を落としまして…。
定期、色々あって2枚持ってまして、故あってあって2枚とも磁気定期を使用してます。

仕事終わりに友達と待ち合わせした先が定期の圏外に突入するので、清算をしていたら、清算用の切符が出ますよね。磁気定期とその切符を一緒に入れると、切符は吸い込まれて、定期は再びピッと出てきます。……これです。落とした理由は。吸い込まれる切符に気を取られた。
あと急いでたから。わたし昨日携帯電話を家に忘れてしまって…。
職場の携帯電話(外でも使える)を持っていこうかなあと思って結局やめて、友達とすれ違いにならないよう、急いでいたんです。

で、夕食のために別の駅に移動して、その時に定期がないのに気付いたわけで、真っ青に。
まだひと月くらいしか使ってない定期ですよ…。買い直しで福沢ゆっきーが数人分飛ぶのは、大打撃…! 状況を思い出して、届けられたとしたら○○駅だ、と確信しました。
友達に電話を借りて、紛失物係へ電話をしたら、営業時間外との機械音声に半ば顔面蒼白。
もうね、このころは無言でした。友達には悪いのですが、何も言えない。
でも、駅の事務所はまだやってるので、その○○駅に直接電話をして。
ありました。よかったよかったああああ。
ありがとうッ! ありがとう親切な人! ありがとう友達!

で、取りに戻ってたら帰宅したのが11時半。
昨日の日記の不測の事態とは、全く仕事に関係のないことでした。スミマセン。

昨日お昼のデザートにシュークリームを購入して新人の女の子(from 京都)に「何買ってはるんですか!」と突っ込まれました。
で、今日もシュークリームを購入してこっそり食べました(笑)。
なんと帰り際にその女の子がチーズケーキをくれました……。年下に恵んでもらうのって、なんだか……って感じですが、ありがたくいただきました。ありがとう。今度わたしも新宿のパン屋さんのパンでも渡そう。

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