※個人の趣味によるブログです。基本的に本を読んでます。
No.237
2012/05/13 (Sun) 23:10:45
拍手、メッセージありがとうございますっ!
母の日です。全国のお母さま方、マイマザーありがとうございます。一人の人間をつくりあげていくんだから偉大。多謝。
母が外出していたので電話して「何か食べたいものある?」と聞いたら嬉々として「温泉卵」、その後に「フレンチトースト」と言い、さらに「お赤飯!」と。ええと、後ろ二つは主食だ。そしてわたし、お赤飯なんて炊いたことがない。
フレンチトーストと温泉卵を両方作ったなら卵の摂取量に問題発生。おかずのリクエストがないってどうなんでしょう確かにわたし、和食は壊滅的に作れないけれど。
電話では「じゃあ温泉卵ね」と返し、さっさとお赤飯の作り方を調べ(曖昧には知ってたけれど)、炊きました。えらいぞ娘(笑)! もちろん温泉卵も並べました。
ちょっと柔らかかったかな、という感じでしたがお赤飯でしたよ?
さて、ここから先はお遊びです。行きつくべきところまでは到達していないのですが、以下小話。
コンセプトは双花で森見登美彦。解る人だけ笑ってください。
先に謝っておきます。全国の楸瑛ファンのみなさま、申し訳ございません…!
母の日です。全国のお母さま方、マイマザーありがとうございます。一人の人間をつくりあげていくんだから偉大。多謝。
母が外出していたので電話して「何か食べたいものある?」と聞いたら嬉々として「温泉卵」、その後に「フレンチトースト」と言い、さらに「お赤飯!」と。ええと、後ろ二つは主食だ。そしてわたし、お赤飯なんて炊いたことがない。
フレンチトーストと温泉卵を両方作ったなら卵の摂取量に問題発生。おかずのリクエストがないってどうなんでしょう確かにわたし、和食は壊滅的に作れないけれど。
電話では「じゃあ温泉卵ね」と返し、さっさとお赤飯の作り方を調べ(曖昧には知ってたけれど)、炊きました。えらいぞ娘(笑)! もちろん温泉卵も並べました。
ちょっと柔らかかったかな、という感じでしたがお赤飯でしたよ?
さて、ここから先はお遊びです。行きつくべきところまでは到達していないのですが、以下小話。
コンセプトは双花で森見登美彦。解る人だけ笑ってください。
先に謝っておきます。全国の楸瑛ファンのみなさま、申し訳ございません…!
***
まず読者諸君に断わっておこう。私は運命とやらを信じない。そんなパンケーキにバニラアイスクリームとたっぷりのホイップクリームをのせて、その上からキャラメルソースだとかチョコレートソースをぐるぐるとかけるような、甘くてふわふわで、その実ずっしりとくるものに夢を見たことはない。
それは往来を行きかう人々の装いパステルカラーじみた色合いが加味され、足取りもどことなく軽くホップ・ステップ・ジャンプと心の中で彼らの歩調に合わせ呟きたくなる陽気。ホップ・ステップ・ジャンプ。ビルの合間を縫って吹き付ける強風にですら、なかなか使い終わらない歯磨き粉の如く僅かにねっとりとした水気を感じる初夏の折――。
私はどうやらその否定し続けていた運命の出会いとやらをしてしまったようだ。
***
薔薇色のキャンパスライフ、というものをご存じだろうか。
定義は人それぞれだろうが、大学生活という何とも曖昧な自由と支配の落とし穴のようなひと時を楽しむことだと了解してほしい。もっと言えば、単位を落とさない程度の成績を誇り、サークル活動などで人間関係を広め、彼らと酒を飲み時には馬鹿なことをしながら親交を深め、そして欠かせないものがある。男である私の目線から言えば、多少下世話な話だが女性とのお付き合い、というものだ。女性とは迂遠な生活を送っているような男子高校生諸君は特にこの思いが強いだろう。
私は時代が時代ならただ生まれただけで一生不自由がない生活を保障されるような家に生まれ、不本意ながら言わせてもらえば顔がそれなりにイイ。背も外国人なみに高いし、頭もよくて運動もできるし、コミュニケーション能力にもたけている。何でも小器用にこなすし、人望だってある。おっと、これはあくまでも心の声のようなものだから石は投げないで頂きたい。それに妬み嫉みを買う以前に、「いい子にしなさい」というような無言の要求をまだ三輪車に乗っていた時分から突きつけられていたのだから、息苦しさひとしおだ。それにこの言外脅迫は一つや二つじゃないのだから。これくらいの保身の言葉は許されてしかるべきだろう。
さて、シマウマだかキリンのように大人しくなる男が増える現状が嘆かれるのとは逆に、ヴィーナスたちがまるで狩人のように積極性を増した昨今、彼女たちが私を放っておくはずもなく。狩られるのも楽しそうだが、残念ながら私は羊の皮をかぶった狼ではないが、花から花へ渡り歩く蝶々のような優雅さで接することを心掛けているのだ。そうすると必然的に三大欲求の一つは消化されてしまい、ますます優雅さが色濃くなる、という循環が成り立ってしまう。そうして私のところに供給過多になった分、品薄に喘いでいる男どものせいで時々背後を気にする生活を余儀なくされているのだが。まあ過言だが。――過言であってほしいのだが。時々背中に寒気を感じるのはどうしてだろう。今度から電車に乗るときは、一番前に並ぶのはよそう。うん。
話が次から次へそれるのはどういうことだろうか。嘆きつつしっかりと進ませてもらおう。
薔薇色のキャンパスライフ、そんなものに全く興味を示さない人種がこの世に存在することも知っている。いや、実際彼に出会ったとき結構衝撃を受けたのだ。美しきのキャンパスライフを否定しても、結局それはその芳醇な蜜にありつけない外野の絶望だとか羨望交じりの嫉妬だと思っていたのだが、彼はギリシャの彫刻のような顔を不機嫌にゆがめて言い切った。
「最高学府たる大学は、神聖なる学び舎だ。学問を究めんとす学徒が集まる場所で、そんなくだらない戯言をまき散らすな」
初夏にもかかわらずなぜ火鍋。女の子たちは独自の情報網を最大限に活用し、新入生歓迎会の会場がこの料理屋だと知ってか、残らずこの場にいない。目がくらむような男所帯と、目を背けたくなるような鍋の中身はそんな男汁あふれる空気を富士山より高く見下している。どろりと真っ赤な液体が満たされた地獄絵図のような出汁を通して、ヘモグロビン色に染まる肉片や野菜を食したせいでか、少し潤んだ瞳が橙色の電飾の下で幻想的な光を帯びる。そのアポロンの矢に等しき鋭さに射止められた私は呼吸を満足にとれず、瞬きを忘れ、耳がキーンとしてきて、焦点を動かさないため視界が徐々にぼやけていき、後半から何が何だか分からなくなってしまった。
血圧が上がると肌の色が赤みを増すという説がある。私の血圧はその時、大ジョッキに入っているのが琥珀色の液体ではなく、醤油を飲んでしまったかのようにバブル期よりもひどいインフレをおこし、ゆでダコのような顔色をしていたに違いない。だって熱い。触らなくともわかるのだ。
ぼーっとしすぎてもはや彼が何を言っているのか聞き取れない。
財布に信用がない学生が集まる料理屋の、狭い座敷に集まった男ばかり十数人。むさくるしい物体ばかりぎゅうぎゅうに押し込まれたそこに無駄なスペースなどほとんど存在しない。誰かが私の後ろを通った時に、背中にその膝がゴン、と当たったのだろう。その衝撃で肺腑に残り循環が滞っていた空気が外に出て、新たに唐辛子の刺激が充満した新鮮とは言い難いピリピリとした成分が混じった酸素を摂取することになる。
火鍋を涙目で、それでもただ飯だと割り切ってがつがつ食べる彼。眼鏡が湯気で曇っているのに気づき、さっきの奇跡の瞬間を思い出して、ドクン。心臓が肥大したのかのような衝撃。十代後半にして健康状態に一抹の不安。
斜め前の席で、顔を俯けてせわしなく箸を動かす彼。見つめすぎて私はすっかり彼の耳の形、頬の丸み、あごのラインの権威になってしまいそうだ。そんな私の熱れつな視線に耐えかねたのか、穴が開くと思ったのか。彼がちらっと私を睨みつけた。ここで再びドクン。
「薔薇色だと思うのは第三者からの視点、つまり己をしかと持っていない奴の幻想だ。そんなものに最高学府で学ぶ機会をつかみ取った俺たちが惑わされてどうする。いつだって自分の努力次第でどうにかなることはどうにかすべきだ」
そうしてグラスの水を一気飲みしてふうっと息を吐いた彼は、この上なくオトコマエという言葉がぴったりだった。
そして私は割とすんなりと受け入れた。
これは紛うことなき恋だ。一目ぼれ。フォーリンラブ。悔しいほど見事に悩殺され、私は烏賊や蛸のような腑抜けになりさがった。
つまり、その瞬間から私はすっかり恋の虜になってしまったのだ。
これはそんな私の運命の出会いの記録である。
*****
双花で森見登美彦、と思いついた時の衝撃…!
チャレンジの性格上一人称で書いたら、楸瑛が痛いうぬぼれ野郎になりました世の中の楸瑛ファンのみなさままことに申し訳ございません。絳攸一人称なら、超絶男前の地の文でも時々照れ隠し、な感じになりそうです。武士道シリーズの香織みたいな、と思って少し書いてみました。
例:
薔薇色のキャンパスライフ、という言葉を知っているだろうか。
世の中に流布する妄言の一種だ。全国妄言コンテストがあったら、ぶっちぎりで大賞を受賞できるくらい馬鹿らしい。
俺は最近聞いて、ずいぶん怪訝に思ったものだ。それを言ったやつが間違えたと思ったからだ。色を塗るのはキャンパスじゃなくてキャンバスだろ。たっぷりと赤でも青でも塗ればいい。
そもそもそのトイレの芳香剤じみた大学生活に必要な要素が、酒だとか猥談だとか女だと言う。
断じて違う。根本から間違っている。
大学とは最高学府。学問をするところだと、まだ裃をつけた武士が腰に長い物をさしていた時代から相場は決まっている。
そんなこと言ったらよりにもよって「君、それ本気で言ってるの?」なんて馬鹿にしたやつがいる。そいつの名は――藍楸瑛。妄言たる薔薇色のキャンパスライフとやらの、信者――いや、実践者だ。
そうして奴はにやりと笑いながらこうのたまったのだ。
「でもあの福沢諭吉だとか伊藤博文だって、学生のころはたいそうやんちゃ騒ぎをしたよね。伊藤博文なんて政界に入ってからも火遊びし放題」
悔しいことに俺はその時反論できなかった。後から湧き上がる気の利いた言葉ほどむなしさをかみしめるものはない。
こうして奴は俺の最大の敵となった。
絳攸でもなかなか楽しいかもしれません(笑)。
ああ、これを昭和時代とかにしたらもっと濃くなったかもしれない。文体ももう少し変えて。学生帽をかぶった詰襟の絳攸と楸瑛。丸眼鏡をかけた絳攸!
楸瑛の方も書いていてものすごく楽しかったです。語弊を恐れずに言うなら久々に書く喜びを味わいました。
書くにあたって森見さんの本を読み返してみたのですが、数か月前に3冊中2冊を処分してしまっていて…。「四畳半神話大系」を参考にしたかったのですが、あまりにもコピペ文学が過ぎるので(笑)地元の古本屋さんに託しました(オズ君ファンです笑)。森見さんはあと「太陽の塔」も読みました。
それで必然的に唯一手元にある「夜は短し(略)」をなめるように読みました。付箋を活用しようと思ったのですが、見当たらないためクリップで代用し(かなりずぼらな性格なのは周知の事実)、気になる個所を止めていったらすごいことになりました…。
初めて付箋(クリップで代用)を貼った本がまさかの森見作品だとは。京極じゃなくて森見さんだとは…。予想外でした。京極は大体覚えてるけどね、ふ。
「夜は短し(略)」は幻想的な雰囲気が好きです。ふわふわしていて結構意味不明ですが(いやあの……スミマセン)、なんかいいんだよなあ。幸せな気分になれます。可愛い。ポップでキュートな一冊。なむなむ。
森見さん、キーワードは「薔薇色のキャンパスライフ」と「四畳半」と「黒髪の乙女」とかですか。少なくともわたしが読んだ3冊では。面白い面白くないは別として個人的には彼の文章には慣れることがないと思います。いつ読んでも幕末に現れた散切り頭くらい斬新。
えーっともし森見さんを読んでみようかなあ、と思った方がいらしたら、初めの1、2ページ立ち読みしてから決断することをお勧めします。超絶個性が強烈な作風なので。作者確かめずとも少し読んだから「これ森見さんだ」と断言する自信があるほど、独特のスメルがあります。
うちの母(※社会人になって初めての年、同僚に誕生日プレゼントなにがいいと聞かれて「三○堂の国語辞典が欲しい」とブランドまで指名した人)は読んでもきっと「意味が解らない」とけんもほろろでしょうから、渡してませんが。そういう本。
あ、この本はあとがきまでちゃんと見たほうがいいです。お勧めです。
まず読者諸君に断わっておこう。私は運命とやらを信じない。そんなパンケーキにバニラアイスクリームとたっぷりのホイップクリームをのせて、その上からキャラメルソースだとかチョコレートソースをぐるぐるとかけるような、甘くてふわふわで、その実ずっしりとくるものに夢を見たことはない。
それは往来を行きかう人々の装いパステルカラーじみた色合いが加味され、足取りもどことなく軽くホップ・ステップ・ジャンプと心の中で彼らの歩調に合わせ呟きたくなる陽気。ホップ・ステップ・ジャンプ。ビルの合間を縫って吹き付ける強風にですら、なかなか使い終わらない歯磨き粉の如く僅かにねっとりとした水気を感じる初夏の折――。
私はどうやらその否定し続けていた運命の出会いとやらをしてしまったようだ。
***
薔薇色のキャンパスライフ、というものをご存じだろうか。
定義は人それぞれだろうが、大学生活という何とも曖昧な自由と支配の落とし穴のようなひと時を楽しむことだと了解してほしい。もっと言えば、単位を落とさない程度の成績を誇り、サークル活動などで人間関係を広め、彼らと酒を飲み時には馬鹿なことをしながら親交を深め、そして欠かせないものがある。男である私の目線から言えば、多少下世話な話だが女性とのお付き合い、というものだ。女性とは迂遠な生活を送っているような男子高校生諸君は特にこの思いが強いだろう。
私は時代が時代ならただ生まれただけで一生不自由がない生活を保障されるような家に生まれ、不本意ながら言わせてもらえば顔がそれなりにイイ。背も外国人なみに高いし、頭もよくて運動もできるし、コミュニケーション能力にもたけている。何でも小器用にこなすし、人望だってある。おっと、これはあくまでも心の声のようなものだから石は投げないで頂きたい。それに妬み嫉みを買う以前に、「いい子にしなさい」というような無言の要求をまだ三輪車に乗っていた時分から突きつけられていたのだから、息苦しさひとしおだ。それにこの言外脅迫は一つや二つじゃないのだから。これくらいの保身の言葉は許されてしかるべきだろう。
さて、シマウマだかキリンのように大人しくなる男が増える現状が嘆かれるのとは逆に、ヴィーナスたちがまるで狩人のように積極性を増した昨今、彼女たちが私を放っておくはずもなく。狩られるのも楽しそうだが、残念ながら私は羊の皮をかぶった狼ではないが、花から花へ渡り歩く蝶々のような優雅さで接することを心掛けているのだ。そうすると必然的に三大欲求の一つは消化されてしまい、ますます優雅さが色濃くなる、という循環が成り立ってしまう。そうして私のところに供給過多になった分、品薄に喘いでいる男どものせいで時々背後を気にする生活を余儀なくされているのだが。まあ過言だが。――過言であってほしいのだが。時々背中に寒気を感じるのはどうしてだろう。今度から電車に乗るときは、一番前に並ぶのはよそう。うん。
話が次から次へそれるのはどういうことだろうか。嘆きつつしっかりと進ませてもらおう。
薔薇色のキャンパスライフ、そんなものに全く興味を示さない人種がこの世に存在することも知っている。いや、実際彼に出会ったとき結構衝撃を受けたのだ。美しきのキャンパスライフを否定しても、結局それはその芳醇な蜜にありつけない外野の絶望だとか羨望交じりの嫉妬だと思っていたのだが、彼はギリシャの彫刻のような顔を不機嫌にゆがめて言い切った。
「最高学府たる大学は、神聖なる学び舎だ。学問を究めんとす学徒が集まる場所で、そんなくだらない戯言をまき散らすな」
初夏にもかかわらずなぜ火鍋。女の子たちは独自の情報網を最大限に活用し、新入生歓迎会の会場がこの料理屋だと知ってか、残らずこの場にいない。目がくらむような男所帯と、目を背けたくなるような鍋の中身はそんな男汁あふれる空気を富士山より高く見下している。どろりと真っ赤な液体が満たされた地獄絵図のような出汁を通して、ヘモグロビン色に染まる肉片や野菜を食したせいでか、少し潤んだ瞳が橙色の電飾の下で幻想的な光を帯びる。そのアポロンの矢に等しき鋭さに射止められた私は呼吸を満足にとれず、瞬きを忘れ、耳がキーンとしてきて、焦点を動かさないため視界が徐々にぼやけていき、後半から何が何だか分からなくなってしまった。
血圧が上がると肌の色が赤みを増すという説がある。私の血圧はその時、大ジョッキに入っているのが琥珀色の液体ではなく、醤油を飲んでしまったかのようにバブル期よりもひどいインフレをおこし、ゆでダコのような顔色をしていたに違いない。だって熱い。触らなくともわかるのだ。
ぼーっとしすぎてもはや彼が何を言っているのか聞き取れない。
財布に信用がない学生が集まる料理屋の、狭い座敷に集まった男ばかり十数人。むさくるしい物体ばかりぎゅうぎゅうに押し込まれたそこに無駄なスペースなどほとんど存在しない。誰かが私の後ろを通った時に、背中にその膝がゴン、と当たったのだろう。その衝撃で肺腑に残り循環が滞っていた空気が外に出て、新たに唐辛子の刺激が充満した新鮮とは言い難いピリピリとした成分が混じった酸素を摂取することになる。
火鍋を涙目で、それでもただ飯だと割り切ってがつがつ食べる彼。眼鏡が湯気で曇っているのに気づき、さっきの奇跡の瞬間を思い出して、ドクン。心臓が肥大したのかのような衝撃。十代後半にして健康状態に一抹の不安。
斜め前の席で、顔を俯けてせわしなく箸を動かす彼。見つめすぎて私はすっかり彼の耳の形、頬の丸み、あごのラインの権威になってしまいそうだ。そんな私の熱れつな視線に耐えかねたのか、穴が開くと思ったのか。彼がちらっと私を睨みつけた。ここで再びドクン。
「薔薇色だと思うのは第三者からの視点、つまり己をしかと持っていない奴の幻想だ。そんなものに最高学府で学ぶ機会をつかみ取った俺たちが惑わされてどうする。いつだって自分の努力次第でどうにかなることはどうにかすべきだ」
そうしてグラスの水を一気飲みしてふうっと息を吐いた彼は、この上なくオトコマエという言葉がぴったりだった。
そして私は割とすんなりと受け入れた。
これは紛うことなき恋だ。一目ぼれ。フォーリンラブ。悔しいほど見事に悩殺され、私は烏賊や蛸のような腑抜けになりさがった。
つまり、その瞬間から私はすっかり恋の虜になってしまったのだ。
これはそんな私の運命の出会いの記録である。
*****
双花で森見登美彦、と思いついた時の衝撃…!
チャレンジの性格上一人称で書いたら、楸瑛が痛いうぬぼれ野郎になりました世の中の楸瑛ファンのみなさままことに申し訳ございません。絳攸一人称なら、超絶男前の地の文でも時々照れ隠し、な感じになりそうです。武士道シリーズの香織みたいな、と思って少し書いてみました。
例:
薔薇色のキャンパスライフ、という言葉を知っているだろうか。
世の中に流布する妄言の一種だ。全国妄言コンテストがあったら、ぶっちぎりで大賞を受賞できるくらい馬鹿らしい。
俺は最近聞いて、ずいぶん怪訝に思ったものだ。それを言ったやつが間違えたと思ったからだ。色を塗るのはキャンパスじゃなくてキャンバスだろ。たっぷりと赤でも青でも塗ればいい。
そもそもそのトイレの芳香剤じみた大学生活に必要な要素が、酒だとか猥談だとか女だと言う。
断じて違う。根本から間違っている。
大学とは最高学府。学問をするところだと、まだ裃をつけた武士が腰に長い物をさしていた時代から相場は決まっている。
そんなこと言ったらよりにもよって「君、それ本気で言ってるの?」なんて馬鹿にしたやつがいる。そいつの名は――藍楸瑛。妄言たる薔薇色のキャンパスライフとやらの、信者――いや、実践者だ。
そうして奴はにやりと笑いながらこうのたまったのだ。
「でもあの福沢諭吉だとか伊藤博文だって、学生のころはたいそうやんちゃ騒ぎをしたよね。伊藤博文なんて政界に入ってからも火遊びし放題」
悔しいことに俺はその時反論できなかった。後から湧き上がる気の利いた言葉ほどむなしさをかみしめるものはない。
こうして奴は俺の最大の敵となった。
絳攸でもなかなか楽しいかもしれません(笑)。
ああ、これを昭和時代とかにしたらもっと濃くなったかもしれない。文体ももう少し変えて。学生帽をかぶった詰襟の絳攸と楸瑛。丸眼鏡をかけた絳攸!
楸瑛の方も書いていてものすごく楽しかったです。語弊を恐れずに言うなら久々に書く喜びを味わいました。
書くにあたって森見さんの本を読み返してみたのですが、数か月前に3冊中2冊を処分してしまっていて…。「四畳半神話大系」を参考にしたかったのですが、あまりにもコピペ文学が過ぎるので(笑)地元の古本屋さんに託しました(オズ君ファンです笑)。森見さんはあと「太陽の塔」も読みました。
それで必然的に唯一手元にある「夜は短し(略)」をなめるように読みました。付箋を活用しようと思ったのですが、見当たらないためクリップで代用し(かなりずぼらな性格なのは周知の事実)、気になる個所を止めていったらすごいことになりました…。
初めて付箋(クリップで代用)を貼った本がまさかの森見作品だとは。京極じゃなくて森見さんだとは…。予想外でした。京極は大体覚えてるけどね、ふ。
「夜は短し(略)」は幻想的な雰囲気が好きです。ふわふわしていて結構意味不明ですが(いやあの……スミマセン)、なんかいいんだよなあ。幸せな気分になれます。可愛い。ポップでキュートな一冊。なむなむ。
森見さん、キーワードは「薔薇色のキャンパスライフ」と「四畳半」と「黒髪の乙女」とかですか。少なくともわたしが読んだ3冊では。面白い面白くないは別として個人的には彼の文章には慣れることがないと思います。いつ読んでも幕末に現れた散切り頭くらい斬新。
えーっともし森見さんを読んでみようかなあ、と思った方がいらしたら、初めの1、2ページ立ち読みしてから決断することをお勧めします。超絶個性が強烈な作風なので。作者確かめずとも少し読んだから「これ森見さんだ」と断言する自信があるほど、独特のスメルがあります。
うちの母(※社会人になって初めての年、同僚に誕生日プレゼントなにがいいと聞かれて「三○堂の国語辞典が欲しい」とブランドまで指名した人)は読んでもきっと「意味が解らない」とけんもほろろでしょうから、渡してませんが。そういう本。
あ、この本はあとがきまでちゃんと見たほうがいいです。お勧めです。
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