ひらりひらり、舞うのは蝶々

久々外国の小説「蝶のいた庭」を読んでいます。
少女たちは蝶として飼育されていた、という設定に落ちました。まだイントロなので、どういう展開になるか楽しみです。

物心ついた時にはそういう環境でした。
朝日がこぼれるカーテンはくすんだ色の花柄で、光をさえぎってくれない素材なのでアラームよりも早く眩しさで目が覚めます。「リサ」がまだ寝息を立てているのを聞きながら、パジャマを脱いでいる最中に、ようやくピピピと鳴るアラームを止めていました。
顔を洗って一階に下りれば、温かいスープとスクランブルエッグにフレッシュオレンジが添えられたプレートが五つ。笑顔で迎えてくれる「パパ」がトースターでパンを焼いて、香ばしい香りで胸がいっぱいになりました。
バターをたっぷり塗ったパンをプレートにおいて、ミルクが入ったグラスが目の前に置かれたところで、「エミリー」と「サラ」が降りてきます。二人は私よりお寝坊さんなの。
でも、テーブルを見ると、寝ぼけた顔が一気に輝いてテーブルに駆け寄ってきます。
エミリーは私よりちょっと年上で、サラは下。血がつながってないのに二人ともやわらかい色の髪でとても似ています。私はこの通り、黒髪で明らかに浮いているからうらやましかったです。
パパは二人のためにトーストを用意して、同じようにミルクを注いでくれます。
そして、一番年上のエミリーにリサを起こしてくるように言います。
元気のいい返事を返して階段を駆け上り、しばらくしてから駆け下りてくるエミリーの後ろから、足を延ばして階段を一段一段ゆったりと足取りで降りてくるリサが現れます。
リサが一番お寝坊なのは私と同室だからです。私が早起きして、アラームもすぐに止めてしまうから彼女は起きられないんです。
それにーー。彼女はパパの特別なの。
金髪にブルーの目。同い年なのに大人っぽくて、一目置かれる美貌が備わっています。私はリサにあこがれていた。パパも彼女の顔を見る時間が、私たちを見る時間よりも少し長いの。
自分が一番愛されているのを感じ取ってるから、ガラス玉のような瞳でじっと私たちの顔を見つめながら、妙に大人びた発言で場をしらけさせるのです。
自分のことを子供っぽいとーー本当のことを言われて喜ぶ子供なんていません。都合の悪い真実を告げられると大抵の子供は、羞恥から怒ります。彼女はそんなんだからいつも一人でした。そうするとパパが彼女といる時間が増えるのです。
ーー話がそれてしまいました。
私たちはみんな席についてからご飯を食べます。
食べ終わると歯磨きして、勉強の時間が始まります。平日はそれが夕方まで続きます。
カリキュラムは人それぞれ。いいところを伸ばし、苦手なところをカバーするのが目的。均一な授業なんてしないの。
その間パパは仕事をしているわ。え、パパが何の仕事をしているかって？　それは知らないわ。


ここまで落ち着いたトーンで話し終えた少女、マリはまだ十歳とは思えない知性を持っているのが一目瞭然だ、とブラッド刑事は感心した。東洋系の血が混じっているため、黒髪に黒目の大きなかわいらしい女の子だ。
彼女はつい半日前に軟禁している「ガーデン」から助けられた一人だった。


完全フィクション且つ9割オリジナル。実際の小説では少女たちは「庭師」の「バタフライ」として、扱われます。
魅力的な設定だわ。