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No.397
2013/01/20 (Sun) 03:08:07

「余の命を狙っているとでもいうのか!? それもそなたに罪をなすりつけて…!」
 劉輝は仰天した。まさか国王を暗殺し、側近に罪をなすりつけるなんて事態があっていいはずがない。ようやく太平の世が訪れたのに、再び暗澹とした戦の世界に戻るのなど、民だけではなく兵士たちもこりごりのはずだ。
「考えすぎであってほしいのですが…」
 楸瑛が言葉を濁したことで、かえって劉輝は打ちのめされた。しかし呆然としてはいられない。死にたくないのもあるし、再び戦いの世に戻さないために、なんとしても阻止しなくてはいけないのだ。
「策は? 下手にアレを刺激すると、それこそ合戦になるだろう。何かいい策はないのか?」
「それがですね…」
 そう言ったきり楸瑛は黙ってしまった。ないのだ。沈痛な面持ちで顔を伏せている。この男が知らせを聞いて以来、道中も含め今の瞬間まで考えなかったはずがないのだ。
「…鉄砲隊を千、待機させましょう」
 楸瑛は苦々しく告げた。
「千! 合戦でもするつもりか! どうにか三百程度に抑えられないのか?」
「忍相手に三百ではまず不可能でしょう」
 劉輝は口をつぐんだ。千もの鉄砲隊を動かすのは大事だ。だが、敵は十倍以上の人数をみれば、戦いは起こさずにすむ。牽制としてはまずまずだ。しかし一度退いたからといって、二度目、三度目がないとは限らない。いや、むしろある。知らずうちに劉輝は唸っていた。
「鉄砲隊の人数は百で十分でしょう」
 ひっそりと劉輝の後ろに控えていた絳攸が、この時初めて口を開いた。二対の視線を平然と受けて尚、平然としている。
「ひゃ、百!? いくらなんでもそれは少なすぎるんじゃないか?」
「ええ、全ッ然足りませんよ! 絳攸、君、正気かい? 相手は忍だ。軍勢が八十といっても、普通の兵士の三、四倍の働きをするんだぞ!」
「いや、百でいい。それぞれ市中の民に変装させ、狙撃銃を二丁ずつ持たせる」
 楸瑛は即座に絳攸の思考をなぞり、「なるほど」と呟いた。接近戦が得意な忍を近づかせない作戦だ。
 千人もの軍勢を忍相手にひっそりと配置するのは難しい。だが百なら可能だ。たとえ相手が変装した兵士に気付いたとしても、百、二百ならば侮って攻め込んでくるはずだ。そこを、討つ。一度痛い目を見れば――そしてその後灸を据えれば、根が小心者の男だから震え上がって以後変なことは考えなくなるだろう。
「今度の鷹狩に、奴を招待しましょう」
「ええ!? どういうことだ?」
「……来ると思うかい?」
 劉輝が素っ頓狂な声を上げた横で楸瑛は、顎に手を当てて絳攸の発言をものすごい勢いで吟味しだしたのが解った。
「ああ。喜んでくる。但し一日二日遅れてな」
「君、軍師としても十分やっていけるよ。それも稀代の名軍師だ」
 あきれ顔の楸瑛が放った言葉に、それまで取り澄まして唇に笑みを湛えてさえいた絳攸は、途端に物凄く嫌そうな顔をした。戦嫌いなのだ。
「―――! 絳攸、楸瑛説明しろ!」
 置いてけぼの劉輝は命令だ、とやけっぱちで叫んだ。
「奴が提示してきた日が襲撃日、ということだ」
「あなたの死体を見たくて、飛んでくるでしょうね。前日から警備を始めれば十分でしょう」
 劉輝は胸のつっかえがなくなってすっとすると同時に酷く疲れた。有能な部下の主君をやるのはつくづく大変なのだ。
「で、余は何をすればいいのだ?」
「鷹狩場へ行くのを数日遅らせてください」
 その間に手筈を整えるのだろう。絳攸と楸瑛の顔を見て、成功するか、なんて馬鹿なことは訊かなかった。


*****
「捨て童子(略)」のお気に入りシーンを配役を変え且アレンジしてみましたごめんなさい。

わたし、歴史・時代小説家の中では、司馬遼太郎や藤沢周平よりも隆慶一郎が好きだああああ…! 池波正太郎と並ぶか、追い越してるレベルで大好きです。通じる人募集中(笑)。
「捨て童子 松平忠輝」(全三巻)読了しました。
大満足の大満足! 今年一番の本候補、早くも一つ目が決定です。
人間を書くのが巧いし、登場人物の人生がみえるのっ。家康さま、ステキです。いや、主人公は殿の息子で、彼も魅力的ですが。魅力的な人物たちが鮮やかに動いてくれて、本当に楽しいたのしい。そこに権力闘争が加わり、どうかわすか、だけではなく、遺恨を残さないように角を立てずに、が加わる。藩政をしない相手には、震え上がるようなお灸をすえて…! ああああ楽しいっ! ダイナミック!

本当は、昨日(金曜日)からランニング再開する予定でしたが、あまりにも疲労困憊だったため、今日からにしました。2.5kmくらい走りました。5kmまではまだ遠い。
……え、火曜日雪降るの!?
こういう時って、数日間休んで結局なあなあになって、やめてしまうパターンがあると思うのですが、わたし、逆に意地でもやめない人です。覚悟してろよなあ…! (これで本当に引っ込みがつかなくなった笑)

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