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No.610
2013/11/09 (Sat) 11:25:55

昨日帰りがけ、お花屋さんで薔薇のキャンペーンをしていたので、包んでもらいました。うん、なんか女子力高いって感じがしません(笑)? ええ、本当に女子力が高いならば、自ら「女子力高い」なんて言いません何故ならそれがあたりまえだから。
香りが強い物を一本いれたので、高貴な空気を漂わせています。

さてさて、今回は詰め合わせではなく練習です。SF苦手な割にSFネタが多いのは、はてどうしてでしょう?
思わぬ長さになり、サイトにアップしようかと思ったのですが、少しイロモノ系といいますか気にしすぎだとは思いますがちょっと問題アリかもしれないので、何がきてもOKという方のみ、お読みください。SFで言ったら結構王道だと思うのですが(<いう程SFを読んでない人間の説得力のない一言)、原作が中華ファンタジーなので階が違うので、一応警告をば。


=====

一定時間が経過すると自動で節電モードになる通信装置がパッと光を放つ。歪が生じた画面が一人の男の像を結んだ。白衣を着た男だ。手元の機材を操っているのだろう、伏し目がちだった眼がモニターに向く。珍しい紫色を溶かした瞳が、ぱっと広がった。
「地球のみなさん、元気ですか?」
「ああ、もうそんな時間か」
手を止めて振り返りモニターを見上げ、誰かがぽつりと呟いた。毎週月曜日の朝九時。決まった日時に全館放送されるこの通信は、時計代わりにもなっている。
「やあ、絳攸。元気かい? そっちの――月面基地は変わりがないかい?」
スピーカーを通して別の男の声が響き渡った。月面基地の絳攸とともに、ここの研究員ならだれもが知っている人物のものだ。
月に基地が創設されてから一世紀が経過した。週間行事である月との通信は開設当時から滞りなく行われている。
「月面基地は相変わらずだ、藍室長――いや、長官に就任されたのですよね。おめでとうございます」
「おや、耳が早いね。とはいっても来月からだよ」
「それは失礼しました。それで報告だが――」
階級が変わらないと解った瞬間、いつもの口調に戻る絳攸に、スピーカー越しでも相手が苦笑したのが解った。

楸瑛はマイクロフォンの電源をオフにした。
月へ送られているライブ動画のワイプに映って消えたのは、十年以上変わらない姿をしている自分だ。一方磨き上げられた柱に映し出されたのは、男の盛りをいくつか過ぎた顔だった。今の楸瑛がそこにはいる。
月の方の通信が切れたのが解ったのは、画面がブラックアウトしたからだ。ワイプされた楸瑛と同じく、十年以上ずっと変わらぬその姿に、沈痛な面持ちをした。
舌の上にあの日のビールの味が蘇る。振り払おうと書類を広げたが、無駄だった。

澄んだ空に浮かぶ三日月が、とてもきれいな夜だった。

あの日、ふと眼をやると絳攸が楸瑛の部署の入り口に立っていて、親指でクイッと外を示したのだった。
仕事の鬼の絳攸が珍しいと意外に思いながらついていけば、通称ブラック・ボックスにつれて行かれた。別名、開かずの間。その実態は「これ、十年前の資料だけどいるのかな」「いや、いらないと思うけどでも、もしかして使うかもなあ」「うーん、なら取敢えずとっておくか」という姿勢のもと、何でもかんでも詰め込まれるようになった資料室という名の、深く闇に閉ざされた一室だ。古くから所属する研究員曰はく、あそこにしまったものは二度と見つからないんじゃよ――そんな部屋だ。
白衣のポケットから鍵を出してドアを開けると、センサが感知して自然に明かりがともった。
圧倒的な量を誇る書類やプロトタイプ、サンプルに加え、自転車、人体模型、歯型、不気味なアンティークドールに、カーニバルの仮面と鬘にコスチューム、何故か縄跳やらなんやらの闇鍋状態。絶対に二度とあける気がないだろう、という梱包され転がっている段ボールの上に絳攸がどかっと腰を下ろしたから、向かい合って座ればビールの缶が差し出された。どこから出したか解らなかったから楸瑛は非常に驚いたし、それよりも絳攸が仕事中にアルコールを摂取することが衝撃だったから、まじまじと缶のロゴとそれを手荷物研究者の顔を見つめた。
「なんだ、いらないのか?」
「いや、いる。いるいる! はい、カンパーイ!」
ムッとして引っ込めようとする手から素早くビールを奪って、プルトップを開け缶を合わせた。――うん、うまい。仕事中の一杯ほど美味しい物はないな。同じく缶に口を付けた絳攸を横目で確認してから楸瑛は切り出した。
「で? こんなところに呼び出したりなんかして、何かあったのかい? 失恋でもした?」
「つまらん冗談はやめろ。――月面基地の局長に任命された。来週の会議で正式発表があると思う」
「ええ! 本当!?」
「というわけで楸瑛、ちょっと月まで行ってくる」
こんな誰も近寄らないところに連れ込まれたからには、何か秘密の話があるに違いないとは思っていたが、予想外に重大な告白に、咳き込んだ楸瑛だった。しかし当の本人のあっさりとした様子に思わず苦笑が漏れる。絳攸と言う人間は満足な研究が出来る環境なら、月だろうと火星だろうとブラックホールだろうと砂漠だろうとツンドラだろうと構わないのだ。それにしても――。
「まったく…。重大なプロジェクトも、君が言うとそこいらにホットドッグを買いに行くくらいにしかきこえないね。任期は? 二年だっけ?」
「ああ。来週から訓練三昧で年明けに出発予定だ。だから研究は今が追込みだ」
「そっか。うーん、二年か。…長いなあ。心からおめでとうと言いたいしそんな気分でいっぱいだけど、やっぱり長いなあ。寂しくなる」
「二年なんてあっという間だろ」
「そうかい?」
「そうだ。現についこの間まで冬服を片付けないとと思っていたら、いつの間にか夏が終わって秋がきたことに今朝気付いた。あっという間に一年が経っていた。そして実は去年の夏の記憶がほとんどない。ほら、二年なんてあっという間だろ?」
「………。うん。私もそう思えるよう仕事に精を出すよ」
「それがいい。――楸瑛」
「ん?」
「留守は任せた」
「諒解」
クスリと笑って、ちびちびとビールを飲んだ。せめてこの時間が少しでも長く続くように――。
しかしそれから十年、絳攸は帰ってこなかった。

異例の若さで大抜擢された月面基地の九代目局長が月に渡って数か月後、巨大な隕石が基地から50km地点に落下し、多大な被害を及ぼした――らしい。公式な数字があるにもかかわらず「らしい」というのは正確な情報か判断できないため、そう表現するしかないのだ。
――週に一度の月との交信が真実を伝えているとは限らない。モニター越しの絳攸が嘘をついている可能性がある。
隕石のもととなった小惑星は、突撃する前に宇宙ゴミにぶつかりいくつかに分解され、比較的大きなものは地球と月の重力均衡地点に留まり、また無数の宇宙ゴミを生み出した。電波が妨害され通信手段は不安定なものとなり、現地局員を助け出そうにも分解された小惑星の残骸が月と地球の間に広がり、行き来が非常に困難になってしまった。
毎週月曜日、月との更新だけが38万km離れた衛星との繋がりを保っている。電波が繋がりにくい状況では、電力が消費されやすいから月曜日だけ。月面基地でどれ程の電源が確保できているのか不明だ。
もともと基地の施設には強力な発電機や、野菜の栽培スペース、鶏と魚の飼育スペース等の快適な生活を維持するため完全にコントロールされた空間が存在し、例えば月で生まれた子供10人が一生過ごしても余りある環境が用意されている。しかし、隕石の衝撃波によって機能が低下したはずだ。
楸瑛はブラックアウトしたモニターを見つめる。
画面に映し出された絳攸は偽物。そう、プログラムだ。
月面基地局員の――絳攸の生存は不明だということは、今は皆が知っている。
恐らく――。楸瑛は何度も絳攸の思考をトレースした。トレースしては遣り切れなさで一杯になってきた。
恐らく絳攸は隕石衝突の後、急いでプログラムを組み立てたのだ。計測データをもとに、月の状況を伝えられるような図面を引いて。何があっても地球との交信が途絶えないように。月の現状を報告できるように。そして、心配かけないように。誰に対する心配? ――それは。
楸瑛は苦笑した。
「君の誤算は十年後もプログラムが滞りなく動作していることかな? 優秀すぎるのも考えものだね」
変わらぬ姿の絳攸。早くからその可能性に気付いた楸瑛ならずとも、今は皆知っている。
だから楸瑛も応答用のプログラムを組み立てた。何があっても絳攸との交信が途絶えることのないように。もし、本物の――生きた絳攸が交信を耳にしたときに、自分の声を、姿を届けることが出来るように。
絳攸のプログラム同様老いがないのは、ちょっとした皮肉だ。君のイタズラなんてとっくに気付いているよ、という。
――ハロー絳攸。そっちはどんな様子?
開かずの間で一緒にビールを飲んだあの日から経過した歳月によって、変わってしまった顔から眼をそらして、心の中で通信を続ける。
――留守を任されたし、君を待ってがむしゃらに働いていたらいつの間にか長官にまでなってしまったよ。優秀な部下のおかげで私の仕事量はかなり減ったし――。仕事に精を出して以前みたいに時を忘れるってわけにもいかないんだ。だから、早く帰っておいで。でないと。
重厚な机に広げられた書類。隕石落下のせいで長年頓挫していた月面探査の計画書の準備はもう出来ている。

=====

うわ、SFって難しい、と書きながらくじけそうになりました(苦笑)。書かないつもりでいた展開を書くことになったり、あああーお。
や、初めは後の世界で二人ともプログラムになっちゃったよー、という設定でショートショート的にするつもりだったのですが、練習として載せるにしてもあまりかなあ、とソフトにしてこうなりました。

最近ネタが枯渇しそうな恐怖に襲われます(苦笑)。本を読めばいろいろ着想が湧く気がするので、さあ読書の秋が始まる、かも? あ、立冬過ぎたので冬ですか。

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