※個人の趣味によるブログです。基本的に本を読んでます。
No.350
2012/09/30 (Sun) 01:12:04
書いてます、が。今日は限界。
彩雲世界が新刊(ファンブック)騒ぎのところ、我が家にはまだやってきてないので「こちら(略)」の続きを折り畳んでおきます。
見直してないので、恐ろしい…。
彩雲世界が新刊(ファンブック)騒ぎのところ、我が家にはまだやってきてないので「こちら(略)」の続きを折り畳んでおきます。
見直してないので、恐ろしい…。
廊下は閑散としていた。
職員室の一つ上の階、そして学級で占められるフロアが始まるひとつ下には、移動教室用の部屋や、保健室など日常的には使われるない教室が並んでいる。その一つ、階段を降りて、左手側にあるドアの前に絳攸は立っていた。無機質で変わり映えのしない横開きの扉には、ほかの教室と同じようにひっかき傷がつき、コーティングがはがれている。しかしその上、プレートには生徒会室、の文字。
そう、ここは生徒会室。つまり藍楸瑛がいる場所だ。
佇む絳攸は、忌々しさで一杯だ。
ただ、目立たずひっそりと暮らしたいだけなのに。静かな生活、というささやかな望みを断とうと悪魔の契約をちらつかせた男に会いに行くなど、言語両断と言ってもいい。でも、目の前にちらつかされた人参の前に、きっぱりと断りきれなかったのだ。
――一度でいいから見学においでよ。歓迎するよ。それに君の考えが変わるかもしれないし。
そう笑顔を向けられて、頭の中では金と静かな生活が天秤に掛けられて、そしてグルグルと思考を地球何周分も働かせていた絳攸は、はっと閃いた。ここでノーと言うよりも、一度見学して、それから断る方が効果的ではないか。そうしたら相手の気も済むだろう、と。
ゆえに生徒会室の前に突っ立っている。
――それに。
もし、と絳攸は危機管理という名の想像力を働かせた。
絳攸がこうして自主的に訪れなかったら、どうなるだろうか。楸瑛が教室まで態々来てあの胡散臭い笑顔で「迎えに来たよ」なんて言った日には、教室中の注目を浴び、それが人づてに拡散して――。ぞっとした。
だからこうして自ら行動に移したのだ。それもいつもならホームルームが終われば、他の生徒たちのおしゃべりを縫って、そそくさと帰るところを教室に人がいなくなるまで時間を潰して。そうでもしないと生徒会室に入っていく姿を観られないとも限らない、と考えてのことだ。
だから、廊下は静かなものだった。
無意識に溜息を吐いてから、ドアをノックした。
「李絳攸だ。見学に来た」
………。
何の返事もない。
もう一度、今度は強い目に扉を叩く。声も若干大きめに歯切れよく。
「李絳攸だ!」
………。………。
漫画なら背景に「シーン…」と効果音が入ったに違いない。
絳攸は、少し頭にきた。確かに次回生徒会執行委員が集まる日――つまりこの日に見学に行くと、楸瑛の方が積極的に話を進めたくせに、いざ嫌々ながらも来てみればいないとはどういうことだ。クラスメイトが下校したり部活に出たりして、校舎が閑散とするまで時間をつぶしてまで、こうしてやって来たのに…。
絳攸は数秒ドアを睨みつけた後、虫の居所は悪いままだったが馬鹿らしくなって背を向けて、そのまま帰ろうとした。
書割でいたいのだ。いないなら断る理由になるだろう。見切りをつけて、少し歩くと。
――ガンガラガッシャン!
何か壊れる音の後、「ちょ、ちょっと待つのだ!」と叫び声が上がった。
驚いて振り返ると、髪の毛を乱して必死の形相で絳攸を見る同じ制服を着た男が一人。命綱を握ろうとするがごとく、手を伸ばしている。口なんて「だ」の形のままだ。頭上には、パーティ用のキラキラのとんがり帽子。しかも傾いている。整った顔立ちをしているからよけに滑稽だ。
その奇態な男に絳攸は眉を寄せ、冷ややかな視線を送った。それを受けて一瞬怯んだが、真っ直ぐに見返してくるところから、意外に気骨があるのかもしれない。
その後ろ――なぜか折り紙のあの幼稚園の誕生会などで使われる、連なった輪っかがぶら下がったドアの向こうから、顎にゴムは通さず、頭に載せたとんがり帽子をすっと脱いだ、精悍な顔立ちの男が現れ「やはり私の言う通りでしたね、会長」と告げた。
――そう。これが生徒会長、ご存じ紫劉輝。
「彼はきっと帰ってしまう、と」
「お主の言う通りだったな、楸瑛」
そして藍楸瑛は絳攸にニコッと微笑んで、「絳攸、よく来てくれたね。さ、入って」そう招き入れた。
非常に不本意だが、絳攸が扉をくぐると同時に。
パンパンパン! 破裂音が響き、そして視界が色とりどりのシャワーでふさがれた。
眼の前にはクラッカーを向けた、とんがり帽子をかぶった生徒会メンバー。そして遅れて眼前に「生徒会へようこそ! 歓迎! 李絳攸君」の文字。割れた薬玉に、絳攸は眩暈を感じながら
「クラッカーを人に向けるなー!」
と力一杯叫んだ。
その声は校庭で練習する野球部にまで届いたとかなんとか。
******
続く。
職員室の一つ上の階、そして学級で占められるフロアが始まるひとつ下には、移動教室用の部屋や、保健室など日常的には使われるない教室が並んでいる。その一つ、階段を降りて、左手側にあるドアの前に絳攸は立っていた。無機質で変わり映えのしない横開きの扉には、ほかの教室と同じようにひっかき傷がつき、コーティングがはがれている。しかしその上、プレートには生徒会室、の文字。
そう、ここは生徒会室。つまり藍楸瑛がいる場所だ。
佇む絳攸は、忌々しさで一杯だ。
ただ、目立たずひっそりと暮らしたいだけなのに。静かな生活、というささやかな望みを断とうと悪魔の契約をちらつかせた男に会いに行くなど、言語両断と言ってもいい。でも、目の前にちらつかされた人参の前に、きっぱりと断りきれなかったのだ。
――一度でいいから見学においでよ。歓迎するよ。それに君の考えが変わるかもしれないし。
そう笑顔を向けられて、頭の中では金と静かな生活が天秤に掛けられて、そしてグルグルと思考を地球何周分も働かせていた絳攸は、はっと閃いた。ここでノーと言うよりも、一度見学して、それから断る方が効果的ではないか。そうしたら相手の気も済むだろう、と。
ゆえに生徒会室の前に突っ立っている。
――それに。
もし、と絳攸は危機管理という名の想像力を働かせた。
絳攸がこうして自主的に訪れなかったら、どうなるだろうか。楸瑛が教室まで態々来てあの胡散臭い笑顔で「迎えに来たよ」なんて言った日には、教室中の注目を浴び、それが人づてに拡散して――。ぞっとした。
だからこうして自ら行動に移したのだ。それもいつもならホームルームが終われば、他の生徒たちのおしゃべりを縫って、そそくさと帰るところを教室に人がいなくなるまで時間を潰して。そうでもしないと生徒会室に入っていく姿を観られないとも限らない、と考えてのことだ。
だから、廊下は静かなものだった。
無意識に溜息を吐いてから、ドアをノックした。
「李絳攸だ。見学に来た」
………。
何の返事もない。
もう一度、今度は強い目に扉を叩く。声も若干大きめに歯切れよく。
「李絳攸だ!」
………。………。
漫画なら背景に「シーン…」と効果音が入ったに違いない。
絳攸は、少し頭にきた。確かに次回生徒会執行委員が集まる日――つまりこの日に見学に行くと、楸瑛の方が積極的に話を進めたくせに、いざ嫌々ながらも来てみればいないとはどういうことだ。クラスメイトが下校したり部活に出たりして、校舎が閑散とするまで時間をつぶしてまで、こうしてやって来たのに…。
絳攸は数秒ドアを睨みつけた後、虫の居所は悪いままだったが馬鹿らしくなって背を向けて、そのまま帰ろうとした。
書割でいたいのだ。いないなら断る理由になるだろう。見切りをつけて、少し歩くと。
――ガンガラガッシャン!
何か壊れる音の後、「ちょ、ちょっと待つのだ!」と叫び声が上がった。
驚いて振り返ると、髪の毛を乱して必死の形相で絳攸を見る同じ制服を着た男が一人。命綱を握ろうとするがごとく、手を伸ばしている。口なんて「だ」の形のままだ。頭上には、パーティ用のキラキラのとんがり帽子。しかも傾いている。整った顔立ちをしているからよけに滑稽だ。
その奇態な男に絳攸は眉を寄せ、冷ややかな視線を送った。それを受けて一瞬怯んだが、真っ直ぐに見返してくるところから、意外に気骨があるのかもしれない。
その後ろ――なぜか折り紙のあの幼稚園の誕生会などで使われる、連なった輪っかがぶら下がったドアの向こうから、顎にゴムは通さず、頭に載せたとんがり帽子をすっと脱いだ、精悍な顔立ちの男が現れ「やはり私の言う通りでしたね、会長」と告げた。
――そう。これが生徒会長、ご存じ紫劉輝。
「彼はきっと帰ってしまう、と」
「お主の言う通りだったな、楸瑛」
そして藍楸瑛は絳攸にニコッと微笑んで、「絳攸、よく来てくれたね。さ、入って」そう招き入れた。
非常に不本意だが、絳攸が扉をくぐると同時に。
パンパンパン! 破裂音が響き、そして視界が色とりどりのシャワーでふさがれた。
眼の前にはクラッカーを向けた、とんがり帽子をかぶった生徒会メンバー。そして遅れて眼前に「生徒会へようこそ! 歓迎! 李絳攸君」の文字。割れた薬玉に、絳攸は眩暈を感じながら
「クラッカーを人に向けるなー!」
と力一杯叫んだ。
その声は校庭で練習する野球部にまで届いたとかなんとか。
******
続く。
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