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※個人の趣味によるブログです。基本的に本を読んでます。
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No.294
2012/07/20 (Fri) 22:00:51

***追記***
うわあああ、再度メッセージありがとうございます…!! お手数をおかけしてしまって本当に申し訳ないです。ありがとうございますありがとうございますっ! お返事不要とのことですが、一言だけ。牛乳入りオムレツ仲間がいて嬉しいですっ。
********


まさかの「鵼(略)」情報…!!

今回は「鵺」ですが…! (タイトル上正確には「鵼(略)」だけど今回は「鵺」<両方とも読みは「ぬえ」)
今年中に新刊発売だと半ば確信しているのですが、これでまた一歩近づいたってこと…!? ああもうっ(歓喜)! 榎木津ッ! 総一郎お兄様の登場も楽しみにしてますッ(弱い根拠はあるけど勝手な予想)!! 解らない人には本当に意味不明の話でごめんなさい。あ、でも面白いですよ京極の本(宣伝)。
こんな爆弾が投下されたら、本酔いなんて吹き飛ぶにきまってます。覚醒(眼がカッ)!って感じです今。

彩雲に戻って、小話を折りたたんでおきます。原作設定で「ななつのこ」。
思いついてもいつもはうだうだしてるのですが、うだうだせずに書いてみろ! 書かないとうまくならない! と今回は書き終るまでは寝ないキャンペーンをしてみました寝たけど(笑)。


*  *  *

 人生二十数年生きていると少なからず珍事を目撃するものだ。世の中の常識という常識とをひっくり返す孔雀のような弟を持ったせいで、楸瑛はよほどのことじゃない限り驚かない。度胸というより慣れ、経験値の問題だ。
 孔雀な弟の他にも猛獣並みの体力や嗅覚を働かせる上司を含め、近くにいる変人を数え上げることにいとまない。珍妙な鳥みたいな仮面をかぶった尚書がテキパキ仕事をこなし、老獪な狸が嫌がらせのような案件をばらまく相手は、犬みたいに人懐っこい国王で。そうだ黒狼だって潜んでいるというではないか。
 ――動物園の話ではないのが残念だ。なら何のことかと言うと朝廷の話だ。この国大丈夫なんだろうか、と心配になる。深く考えてはいけない問題だ。救いなのは変人だろうと彼らは押しなべて優秀であるという事実だ。
 とにかくそんな楸瑛だからこそ友人――ここで人目を憚り言葉を飾っても仕方がない。周囲には友人と偽っている恋人が、大木の上で枝にしがみついている現場に遭遇しても、さほど驚かなかった。十六歳で状元及第を果たした明晰な頭脳の持ち主が木登り。絳攸をよく知らない余人が見たら、仕事のし過ぎで頭がおかしくなったと騒ぎかねない状況も、楸瑛にとっては着地に失敗した運動音痴のウサギや、音程の外れた鶏のコケコッコーを聴いたくらいの衝撃だ。ないとも限らない、というわけだ。
 絳攸自体少し変わっているのもある。
 朝廷随一の才人と言われて久しいにも関わらず、絳攸は数十歩の距離で迷うこの道にかけての権威である。迷子の名人――いや達人、それもそのはず絳攸流迷子術の開祖様だ。いち早く悪癖に気付いた楸瑛は、それを利用して距離を縮め二人きりで会う仲にまでこぎつけた。恋人になってからが気苦労が多くて、相手を喜ばせようという思いと、独占欲が入り混じった贈り物を受け取ってはくれても身に付けている姿は見たことがなく、優先されるのは仕事となによりも絶対不可侵の位置を占める養い親。じれったくもあるのだが好きになった段階で覚悟した。絳攸が何かあった時に悩みを打ち明けてくれるような心地よさを与えることで、眼を向けてくれるよう鋭意努力中だ。
 さっきの続きで動物に例えるとするなら――。
 むむむ、と唸りながら考えたが、無理だ。たとえられるわけがなかった。絳攸は絳攸だ。贔屓目でしか見れないのだから。
 銀糸の後ろ姿が揺れるたびに、ぱらぱらと緑の葉が落ちる。木登りの腕はなかなかだと感心する余裕がある。同時に、また何か妙なことをしてるなあ、と呆れた。
 楸瑛にとっては細事でも、吏部の副官という地位を得ている以上、木登りする侍郎という、言葉にするとますます要領を得ない間抜けな状態を人目にさらす危険性を回避するべきだろう。どんな噂を流されるかわかったものじゃない。
「おーい、絳攸。何してるのー?」
 ピタッと動きを止めた絳攸は、一拍後勢いよく振り返った。楸瑛を射止めると、その表情が凍りついた。
「絳攸?」
「う、うわッ! お前、楸瑛…! うわああああッ…!」
「え、ちょっと!」
 そこで足を滑らせたものだから楸瑛は慌てて落ちそうな位置に回り込んだ。何とか太い枝にしがみついた絳攸は、肩で息をしている。
「――死ぬかと思った…」
「私も驚いて心臓が止まるかと思ったよ」
 楸瑛は額の冷や汗をぬぐった。
「で、何してるの? 酷暑のせいで冷徹な吏部侍郎もついにご乱心、なんて騒がれるまで時間の問題だと思うよ」
「―――」
 絳攸が口を開きかけた直後だった。バサバサと音を立てて黒い塊がその眼前に飛び出してきた。
 カラス、だ。ずいぶん大きい。
「あ、お前!」
 楸瑛は初め自分が呼ばれたのだと思ったが、違った。
「このっ! 盗んだものを返せ!」
 ああそういうことね、とカラスと格闘を始めた絳攸に納得がいった。なにか大事なものを取られたらしい。ならば、と楸瑛は大木全体が俯瞰できる位置まで移動した。カラスは意外に嘴が大きいから、見てる側としては突かれやしないかと心配でひやひやする。
「絳攸! 君の右斜め上――枝を五本くらい登ったあたりに、鳥の巣がある。探し物はきっとその中だ」
「ああ、解った!」
「――もう一本隣の枝から行った方がいい。そっちのほうが安定してる」
「これか?」
「そう。そのまま上に行って。眼を突かれないように気を付けて!」
「ああ! ……邪魔するなこの野郎!」
 カラスに怒鳴りながら絳攸はとうとう巣を見つけて、手を突っ込む。その頭の上を怒ったカラスが旋回し突いてくるのに舌打ちして、楸瑛は殺気を飛ばした。どこか動きがぎこちなくなったカラスは、それでもカアカアギャアギャア言いながら攻撃してくる。もしかして雛がいるのかもしれない。
 絳攸の手がキラッと光り、「あった」と笑ったと思ったら――。
「え――?」
 安心したのか、正面を狙ってきたカラスをよけようと状態をそらしたまま、頭から宙へ放り出された。
 ――楸瑛の呼吸が止まった。
 
 
 
 左雨林軍の詰所の一室で、絳攸と楸瑛は向かい合って座っていた。
 楸瑛は絳攸のを取って、棘を抜き傷口を次々に消毒していく。
 幸いにして、絳攸は落下せずに済んだ。骨折どころか捻挫もしていない。
 まっさかさまに落ちながら、枝を掴むことに成功したのだ。枝に体を打ち付けた箇所が、軽度の打ち身になっていたくらいで本当に良かった。楸瑛は湿布薬を貼りながら安堵のため息を落とす。あの瞬間を思い出すだけで心臓がきゅっと縮んで、背筋がヒヤリとする。
 擦り傷切り傷の治療に取り掛かる。少ししみる生薬を態と選んぶと絳攸は「あ」という口を作ったのを、目ざとく見つけ、片目で睨んだ。
「私のあの時の驚きに比べれば、大したことないよね」
「実際に怪我したのは俺」
 言葉途中で一番ひどい傷に、ペタリと薬を当てた。
「――――!!」
 絳攸が全身に力を入れて声にならない悲鳴を上げた。痛みをこらえた鋭い眼で見られた。
「ふ、ざけるな…!」
「軍独自の配合でかなりしみるけど、飛び切り効くから」
 いつもやりすぎる大将たちに巻き込まれ、怪我が絶えない部下たちに神とあがめられている薬だ。ただし野郎たちが叫ぶほどしみる。怪我より痛いけどそれも数拍だけだ。中にはこの刺激が癖になる、という変態もいる困った所帯だ。
「後はここだけだ」
 楸瑛は絳攸の前髪を掻き上げて、擦り傷を消毒した。自然と顔が近づく。
 白昼カラスとの格闘劇は、結局誰の勝利だったのだろうか。ふとそんなことを思った。すると自然と言葉が口をついていた。
「私があげた耳飾り、ちゃんと持っていてくれたんだね」
 すぐに懐にしまわれて、一瞬しか見えなかったそれ。
 絳攸はものすごく嫌そうな顔をした後、ぷいっとそっぽを向いて返事をしない。楸瑛はゆるりと笑みを浮かべ、それ以上何も言わなかった。今度はしみない薬をたっぷりと布に取り分け、そむけられた絳攸の顔を正面を向かせる。
「今度のは痛くない奴だよ」
 その前に早く治るようおまじない、と安心させるように笑って、米神に口づけた。
 額の傷に当て、前髪を整えると。
 ふわり、と。
 夏にしては爽やかな涼風が吹き抜けた。


*****
書き始めた時は何かに取りつかれたようにネタを信じて「カラスカラス」と思って進めたのですが、書き終ると何でこんな話を書きたかったんだろう、と我に返りました(笑)。ということでサイトで更新するつもりだったけど、ブログ行きです。手を加えて少し遊んでやりました。はっはっは。楸瑛視点は書きやすいです。
タイトルは童謡からです。

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