選択ミスなのかっ

2日早朝フライトのため、夜明けを空港で迎えました。シャトルバスの時間の関係です。電車で行くともう少し余裕が持てるのですが、楽をしたい。
フライトは眠くて眠くて本も読まずにほとんど寝てました。晴れてたけど靄がかかっていたし。
6日の最終便で戻ります。

前の日記にも書いたのですが、お供の本が「沈まぬ太陽」。
内容ご存じの方にはこの流れでこの本が登場した意味にピンとくるかと思うのですが。飛行機事故（墜落）の問題を取り扱っています。（※もう少し正確には労働組合運動をした男が左遷され、企業の不当人事や利益至上主義に憤り戦う話です）。
ええとええ…と……。わたし、飛行機を使ってきて、飛行機で戻るのですが……。
何でこれを選んだワタシ（汗）！
平気でしょうが、まさかピンポイントでつくとは思ってなかったので、わたわたしました。
空の旅の安全を心より願っている方々がいる機内で読むには少し勇気がいります。

で、これネタにできそう、と思うあたりなんていうか…（苦笑）。
書いたはいいのですが、ちょっとひどいので折りたたんでおきます。

※　※　※

　ポーンという電子音とともにシートベルト着用のサインが消えた。タイミングよくアナウンスも入る。
　パイロットの腕がいいのか、離陸直後の不安定な状態から安定するまで、あまり揺れなかったことに満足した。天候がいいのもフライトの好条件だった。隣の窓側の席を見ると、腕を組んだ絳攸は俯いてまだ寝ていた。産毛で光る頬が眩しい。横顔にかかるサラサラの髪の間から、アイマスクがのぞく。
　絳攸は予約した便の機内誘導が始まって着席してすぐに寝入ってしまった。というのもあまり飛行機が好きじゃないからだ。いや、飛行機のフォルムや構造は彼の大好物なのだが、乗客として乗るのは話が少し違う。どうやら以前、フライト中嵐にあって、怖い思いを舌らしいというのは、よほど言いたくないと見える絳攸の話を短編的につなぎ合わせた結果得られた憶測だ。だから飛行機に乗ると早々に寝てしまう。
　それにしても。長身にこのエコノミークラスは見るからに窮屈だった。
　ニットを纏った肩を揺さぶる。
　寝ぼけた絳攸に迷惑そうに振り払われた。それでもゆったりとした動作でアイマスクが押し上げられ、前髪が不自然な形になった。薄く開けられた瞼から現れた瞳は楸瑛を映す。
「絳攸、窮屈だろう？　機体が安定したみたいだから席を少しリクライニングさせたら？」
　コキコキと骨を鳴らしながら絳攸は無言でリクライニング用のボタンを押して背中に体重をかけた。
「毛布もらおうか？」
「いやいい。目が覚めた」
　絳攸はまだ寝るだろうと思っていたから、楸瑛は少々意外な気がした。その彼が身をかがめ、シート下の手荷物置きからバッグに手を突っ込みごそごそさせている。もとの体勢に戻ると本を持っているのが解った。ブックカバーが掛けられていないから、でかでかとしたタイトルが解る。
　ん、と思った。
　山崎豊子著「沈まぬ太陽」。
「それって…」
　楸瑛が人差し指で示すと絳攸が「ん？」と横目で見た。
「お前も読むか？」
　一巻をバッグから取り出して渡してくれた。
「そうじゃなくて！　何でそのチョイスなのさ！」
　飛行機が墜落する場面があるよね、と叫びたいのはフライトアテンダントの手前飲み込んだ。何とも不吉な選択をしてくれた絳攸は怪訝そうな表情をしている。そんな彼に楸瑛は頭を抱えたくなった。