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No.460
2013/05/08 (Wed) 00:19:12

百合さん小話はしばしお待ちください。
以下、お題的な感じで。気が向いたら2,3パターン書いていこうと思います。
注意:練習は意味や展開等々何も考えずに書いてるので、推敲もしてませんし、生ぬるく浅いです…。

*****
1.楸瑛と絳攸
焦点が定まらない世界が、徐々に像を結んでいく。絳攸の虚ろな瞳も同時に完全な覚醒へ向けて定まる。
白い天井の壁紙は大抵どこのマンションでも変わり映えしないが、段差や電気のカバーの形が違う。それに今、絳攸が寝転がっているベッドの臭いや、シーツの色、カーテンの模様などは、自分の部屋のものとは似ても似つかない。同じところを見つける方が難しいくらいだ。
仰向けで。伸びるようにして。低反発の高級枕に加え自分の腕の上に頭を乗せて。
寝ていたらしい。
それも他人の部屋で。
他人といっても十年からの腐れ縁の男の部屋だし、容赦のない言葉の応酬をして関係をこじらせた次の瞬間、何かの拍子にお互いの肩を叩きながら馬鹿笑いが飛び出るなんてことを何度も繰り返してきたのだから、罪悪感やなんやらは今更抱かない。
むくりと状態を起こして、しばらく腕のしびれを感じながら、シーツの上に見開きを下にしておいてある本を見つけた。
寝っころがりながら本を読んでいたんだ。連日の疲れからそのまま寝落ち。一度顔に本が落ちてきて、たいそう驚いたのは覚えている。眼鏡のフレーム伝いに受けた衝撃はかなりのものだったが、誰かに当たり散らすわけにもいかず、憤慨しつつ、本と眼鏡をおいてまた寝た。
しかし変だ。その本はあるのだが、眼鏡がない。きょろきょろと見て回ったがない。
おせっかいな男が寝ている間に潰してしまったら危ないなどと思って、どこかに片づけたのかという考えが閃いた。寝室の扉をくぐり、回廊からリビングへ向かった。
男がダイニングテーブルとセットの椅子に座って、遠くを見ていた。遠くと言っても都内の手狭な部屋だから、壁のすぐそこが壁だ。十数えるうちに移動できる。
それに男の顔は大きな画面のテレビに向いていた。ただし、先ほどの起きたすぐの絳攸みたいに焦点が合っていない。
それに。向けられた横顔には明らかに異物がある。普段、男の端正な顔には存在しないもの。絳攸の眼鏡。
誰にでも親切でオープンに見えて、実は殆どの人間に素顔をさらさない楸瑛。普段はその事実さえ相手に感じさせずに円滑なやり取りをするのに、今日はあからさまに壁を作っている。それも今まで気の置けない付き合いをしてきた絳攸に対して、だ。心が少し冷えて重くなった。
絳攸は一瞬部屋に入ることを躊躇ったが、顎をぐっと引いて、態とペタペタと足を戸を響かせて何事もないかのように見せかけて、殻を破るように侵入した。
「お前、何馬鹿なことしてるんだ?」
「やあ絳攸。少しは疲れが取れた?」
呆れた声を出せば、男は張り付いたような笑顔を向けてきた。胸がちくりと痛むし、そのせいで腹が立つ。だって絳攸の方に顔を向けていても、見ていないのだ。度入りの眼鏡のせいでぼやけた像しか結ばないはずだ。
「おかげさまでビンビンだ」
「それはちょっと違う意味に聴こえるけど…。もしかして寝ぼけてる?」
「俺のことはいいんだ。お前、両目2.0だろ? 眼鏡がしたいなら伊達眼鏡にしておけ。度の入ってるのなんてかけると目が悪くなる」
「うん。知ってるよ。いいの態とだから」
「知っててやるなんて、どうかしてる」
「そうかもね。でも結構いいものだよ。これをしていると見たくないものを見ずに済むから」
楸瑛はそう言ってまた碌に観えもしないのにテレビに顔を向けた。拒絶の言葉と態度は思った以上に心に深い傷となって絳攸を襲う。痛みのあまり一瞬眉をしかめて、直ぐに戻した。ここで怒ったり逃げたりしたら多分ダメだ。自然に振る舞うよう努力しながら、一歩一歩足を進める。
「実際目が悪くていいことなんてないぞ」
「まあ、そうかもね。――心配しなくてももうすぐはずす」
だから今は放っておいてくれ、か。――ふざけるな。
「力が籠ったお前の目が俺は結構気に入っていたのに、魅力半減だな」
「酷いなあ。でもそう言われると今すぐ眼鏡を外さなければならない気がしてくるよ」
「サバンナでライフル片手に猟が出来る今時珍しいその視力を大事にしろ」
「さすがにそこまで視力はよくないけど」
一旦意味ありげに言葉が区切られる。
「君が獲物なら打ち損じるつもりはないよ」
その瞬間だけ、声に力が宿ったのが解った。相変わらず目はどこかぼんやりしているが。
そうだ、それでいい。俺には本気を向けてこい。
「俺は狩られるよりも狩る方が好みだな。覚悟しろよ楸瑛」
計画的に楸瑛の正面に立った絳攸は、不敵に笑って指で作った銃の照準を胸に定め、「BAN!」と打つ真似をした。
驚いた楸瑛の顔が滑稽で、何とも愉快だった。
見たいと思っているものもそんなものをかけてるから見えないんだ、ばーか、と心の中では罵りながら、すいと吊り上げられた唇で初めて愛の言葉をささやいた。
慌てて眼鏡を外したってもう遅い。

***
絳攸はそこまで目が悪くないってことにしておいてください。帳尻合わせ。

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